建築家の目線で建築計画、家づくり、リフォーム等のコツをお伝えします。
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【最近の事例】両親から引き継ぐ共同住宅などのフルリノベーションについて

【最近の事例】両親から引き継ぐ共同住宅などのフルリノベーションについて

最近、両親から引き継ぐ共同住宅などのフルリノベーションについてのご相談が増えてきていますので少しまとめてみようと思います。

背景・要望

[背景]

□ 依頼者は4・50代

□ 祖父母又は両親が建築し、管理・運営している築40年程度の共同住宅(500~1000㎡程度)

□ 過去の建物のメンテナンスについては、共用部は塗装の塗り替え、防水のやり直し、専有部は入居者が入れ替わるタイミング、不具合が起きたときにその都度ちょこちょこといった程度

□ 近年、配管トラブルや手のかかるメンテナンスなども増えつつある

□ 建物の老朽化に伴い、家賃を下げないと入居者が集まりにくい状況

□ 古い建物のため丁寧に扱ってもらえなく、汚れやごみのポイ捨てなどの問題も抱えている

 

現在は両親が管理・運営をしているが、体力的なことを考えると10~15年後ぐらいのタイミングでこの物件を引き継がないといけない。自身も元気がある今のうちに対策を取っておきたい。とのことから引継ぎ後30年程度持続させるために考えた3つの検討と考察。

 

検討1:建物を取り壊し、新しく建て替える

建物が新しくなるので快適な環境となるのは間違いないのだろうけれど、コストが莫大にかかってしまう。それに鉄筋コンクリート造の築40年の建物を解体してしまうのは建物寿命から見てもまだ早いだろうし、建築ストックを活かすという昨今の社会の流れから見てもどうかと思う。

 

検討2: コストは最小限に。入居者が変わったタイミング、不具合が起きたタイミングで対処療法的に手を加え管理・運営をする。現状維持を継続。

仮にこのケースでいった場合、常に細かなメンテナンスをし続けなければならないのではないか。建物の老朽化、劣化による不具合、家賃の低下、入居者意識の低下など、暗い要素を挙げるといろいろと出てくるが、明るい要素を見出すのが困難。将来暗い要素がどんどん深刻になっていかないか。そして、その状態で引き継がれることを想像すると荷が重すぎる。

 

検討3:建物全体をリノベーションし、現在の建物イメージ、使い勝手等を改善し、管理人・入居者お互いが心地よい関係を整え直す

検討2よりもコストはかかってしまいそうだが、長期的に考えると一概にそうとも言えないのではないか。一旦今の状況をこの先30年に向けてリセットさせるほうがむしろメリットは大きいのかもしれない。安かろう悪かろうではなく、この建物に入居したいという選択理由となるような建物のイメージ、住環境に刷新する。入居者も管理人も心地よい関係に。

 

以上を踏まえて出てきた要望はこちら

 

[要望]

□ 建物全体をフルリノベーションする

□ 古びた外観を一新させ、建物のイメージを変えてしまう

□ 共用部は清潔感のあるデザインとし、オートロックや宅配ボックスなど安心して使える設備を整える

□ 専有部は浴室・洗面・便所をセパレートとし、細かに区切られた間仕切りを無くしてデザイン性の高い室内空間に変更する

□  アルミサッシは腐食が進んでいること、断熱性能が低いことから取り換えを検討する

□ 設備配管、配線は寿命を超えていると考えられるのでやり替えを検討する

□ 建物全体の付加価値を高め、入居者が今以上に快適で安心して愛着を持って住める場所にする

 

確認申請書・確認済証・検査済証、大規模の修繕・模様替、用途変更

共同住宅などのフルリノベーションのご相談を受けた場合、我々設計事務所がまず最初に確認させていただくことがあります。

確認申請書、確認済証はありますか?

確認申請書は建物が、建築基準法や関係法令、条例等に沿ったものであるかどうか、審査を受ける図面(図書)で、確認済証は確認申請書によって審査を受け、法適合していると確認された証になります。簡単に言いますと、確認申請書と確認済証があれば、建設当時、合法的に計画された建物であると考えられます。

 

検査済証はありますか?

建物が完成すると確認申請書通りに建物が出来ているかの検査を受けなければなりません。その合格証が検査済証となります。古い建物の場合、確認申請書と確認済証はあるけれど、完了検査を受けておらず、検査済証が無いということもあります。

 

大規模の修繕・模様替え

主要構造部(壁、柱、床、はり、屋根または階段)の一種以上について行う過半の修繕や模様替えを行う場合は確認申請の一連の手続きが必要になります。

 

用途変更

現在の用途を他の用途に変更する場合で床面積200㎡を超える場合は用途変更の手続きが必要になります。

 

 

建物をフルリノベーションする場合、計画の内容によっては確認申請や用途変更の手続きが必要となる場合があります。(確認申請や用途変更の手続きが不要な場合でも法適合性を確保しておかなければなりません。)
確認申請書、確認済証、検査済証の有無や現在の建物の状況によって、難易度や費用の掛かり方が大きく変わってくることがあります。プロジェクト初期の段階にこれらのことは最低限把握し、プロジェクト実現に向けてどのようなプロセスが必要か見定めておく必要があります。

 

 

事業計画とチーム編成(設計事務所、施工、会計、税理士、不動産、司法書士など)

共同住宅フルリノベーション

共同住宅のように規模が大きくなると事業計画が重要になってくるかと思います。建て主がご自身でしっかりと計画されている場合は問題ありませんが、私たちが事業計画のサポートをさせていただく場合について触れさせていただきます。

 

事業計画を策定するには、測量費、設計監理料、建築工事費、登記費用などといった建物が完成するまでにかかる費用「総事業費」、建物が完成し実際に稼働し出してから発生する賃料収入、店舗収入といった「収入」、管理費、日常清掃費、定期清掃費、固定資産税、都市計画税などといった「支出」、減価償却費(土地・建物)、開業費などの「必要経費」があり、建物の計画時から運用時の長期間にわたる必要な費用を把握し、計画しておく必要があります。さらに、今回のように両親から引き継ぐとなれば、相続や贈与の方面からの検討も必要となるでしょうし、節税の手法なども取り入れることでメリットの多いプロジェクトとなるかもしれません。

 

事業計画の策定は様々な方面から事業を見つめる必要があるため、タカヤマ事務所だけですべてをこなすことはできません。会計コンサルタント、税理士、司法書士、施工者、不動産業社などの協力を得ながら、プロ集団チームをつくり、建て主の状況に応じたサポート体制で、事業が円滑に進むよう取り組んでいます。

 

ご興味ある方はぜひ私共にお声がけください。

 

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タカヤマ建築事務所

タカヤマ建築事務所は関西[大阪市東成区]を拠点に活動している建築設計事務所で、シンプルでありながら温かみある空間をテーマに、使い勝手が良く、その時々のスタイルに応じフレキシブルに変化対応しながら、何年も何十年も利用者に寄り添える建築を提案させていただいています

狭小住宅、中庭型住宅、障害者福祉ホームなどの「住まい」・店舗、事務所、工場、倉庫などの「働く場」・リフォーム リノベーションなどの「再生」を柱に建築空間全般の設計・監理業務を行っています

設計エリアは近畿圏だけでなく、日本全国お伺いさせていただきます。

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