とある株式会社 本社エントランス 飾り棚 計画案

企業とユーザーとのコミュニケーションスペースとある株式会社 本社エントランス 飾り棚 計画案

飾り棚|インテリアデザイン・家具

Story

  • 企業とユーザとの関係

コンセプト

Tandem-furnitureとして提案
https://takayama-arch.com/weblog/tandem_furniture/

企業とユーザーとの関係性。
企業の本社ビルエントランスに飾り棚を設置する計画。
飾り棚を通し、企業とユーザーとのコミュニケーションの場を提案。

  • 企業とユーザとの関係

全体のデザインのこと

企業のエントランスは、社内と社外を結ぶ玄関口であり、企業の顏でもあります。

歴史、CM、スポーツ、賞状やトロフィー等、飾り棚に展示される品々は今まで実践されてきた企業と社会(ユーザー)との接点の記憶。これらを本社ビルのエントランスに設置するということは、企業の社会的役割を今以上に発信し、コミュニケーションの場を構築することだと考え、以下のような提案をさせていただきます。

京都に本社があるグローバルな企業ですので、日本らしさを感じることができるよう、絵画などで多用されている金雲をモチーフとしました。建築のようでもあり、家具のようでもあり、彫刻のようでもあるシンプルなデザイン。シンプルさは日本の美意識にもつながります。

展示物は囲いの中に納めて展示するのではなく、棚の上にオープンな状態(物品によってはケース等で収納)で展示いたします。展示物と観覧者の間に垣根のない展示は、企業と社会(ユーザー)の距離を近づけてくれます。

余白を取りながら、数を抑え、ひとつひとつ丁寧に展示します。ギャラリーや美術館に展示されている作品のように、ゆったりと鑑賞してもらいたいからです。

そこで大切なのは、飾り棚の存在をどの様に認識してもらうかです。

現在のエントランス全体を俯瞰しますと、正面の企業ロゴと、それに向かって伸びる通路により風除室から奥に向かう軸線があります。これにより視線は正面に向けられます。そして、この軸線は1つの空間に2つのエリアを作り出しています。

私たちは、この特徴に着目しました。

まず、飾り棚の後ろに鏡を貼ることにします。鏡は立体展示物の裏側を見せるとともに、インテリアが映り込むことで空間に奥行を与えます。鏡による奥行きは企業ロゴに向かう意識の一部を飾り棚に向かわせてくれます。

次に、2つのエリアの右側をフォーマルなビジネスエリア、左側(受付側)を交流エリアと位置づけ、既存の家具を並べ替えます。交流エリアにはお気に入りの場所に自由に座ることができるベンチ形式の椅子を主体に配置します。自由に自分自身の居場所を決めることができるようにすることで、見えないバリアを取り除きます。

今回の飾り棚のご依頼は、受付カウンター横の一画のみですが、パースで表していますように、次の一画、その次の一画へと拡張していくことが可能です。将来的に展示物が増え続けたとしても、同一デザインで整えることが可能です。使い方によってはベンチやショーケースなどにアレンジすることも可能です。

企業活動に向かう軸線に、もう一つの意識を向けることで、飾り棚が展示物を飾る機能だけにとどまらず、企業にとっても社会にとっても、親しみやすく愛されるコミュニケーションスペースになるのではないか、と考えました。

  • 企業とユーザとの関係

飾り棚のデザインのこと

飾り棚は日本の絵画で多用されている金雲をイメージしてデザインしました。棚側面には日本古来から使用されている材料の銅板を貼ります。新しいうちは派手な印象ですが、時間が経つにつれて落ち着き、経年変化を楽しむことができます。

ランダムな形状は金雲が絵画のシーンを変えるように、展示物のすみ分けを可能にします。

金雲の光沢や反射は少量の光でも主体を明るく美しく見せる効果がありました。銅板の光沢や反射にも同じ効果を期待しています。

また棚に仕込む照明の光が銅板に反射し、鏡の効果とともにキラリと展示物を演出します。





日本の名所である金閣寺、平等院鳳凰堂、富士山など。実物のみならず、水面に映り込む姿が一体となって見える姿は息をのむ美しさがあります。

飾り棚の後ろの鏡の映り込みには意識を向ける、展示物の裏側を見せる、奥行きを感じさせる、大きく見せる、浮いたように見せる、光を反射させるなど、水面と同じ効果を期待します。展示物を美しく演出し、棚そのものも美しくありたい。そんな飾り棚の周りにたくさんの人たちが集まり、企業の愛される名所になって欲しいと願っています。

  • コミュニケーションスペース

バリエーションや細部について

飾り棚の前に同じデザインのベンチを配置しています。壁面に設置される棚と床に配置されるベンチが連続性をもつ一体のデザインとしてエントランス内に構成されます。セパレート式のベンチは配置を変えることで、様々な使い方にフレキシブルに対応できるとともに、いくつものバリエーションを試みることで模様替えを楽しむことができます。座面は柔らかく温かみを感じる檜を使用します。



銅板表面の京都らしさをより強調する、七宝柄や麻の葉柄をエッチングするアイデアについては、模様の種類、大きさ、位置など、実際の施工段階で具体的に決めることとします。

建物概要
所在地:日本
設計期間:2020年4月-8月
主要用途:とある株式会社 本社 エントランス 飾り棚
撮影:CG製作|タカヤマ
構造
構造 : 家具